食育と口腔の健康

食育と口腔の健康

 

昨年、食育基本法が国会で制定され、食育の重要性があらためて注目されています。

 

 とりわけ、子どもに対する食育は、“心身の成長および人格の形成に大きな影響を及ぼし健全な心と身体をはぐくむ基礎となる”と食育基本法の前文にもあげられているとおり、その重要性が強調されています。

 

 近年の「食」をめぐる変化は私たちの口の中の健康にも影響を多大に及ぼしてきました。口腔は消化管の最初の部分に相当し、咀嚼(そしゃく)という重要な役割を担っています。

 

 咀嚼とは、つまり『食べ物を噛み砕く』ということです。何十年か前の日本人の食生活と比較すると、現代は柔らかいものを、より食べるようになったといわれます。顕著な例としてレトルト食品等があげられます。こういった食品を頻繁に摂取するようになって私たちの咀嚼する回数は著しく減ってきたわけです。成長期にある子供たちにおいては、咀嚼する回数が減ると、結果として顎の成長が不十分となり、歯ならびが悪くなることがあります。六人がけの椅子に七人で座ったように、カタカタとした並び方になってしまいます。歯ならびが良くないと顎関節に負担がかかり顎の痛みが出たり、場合によっては頭痛や肩こりの原因になります。また、歯垢や歯石といった汚れが付きやすくなり、むし歯や歯周病(歯槽膿漏)にもかかりやすくなります。

 

 規則正しい食生活は、むし歯の予防においても、たいへん重要なことです。子どもは成長のために多くの栄養を必要とします。そのため一日三回の食事のほかに、おやつといった方法で栄養を取り入れることが必要になります。しかし①おやつの回数が多い②ダラダラと長い時間をかけて食べる、などといった子どもたちには、むし歯が多いという傾向があります。対策としておやつを食べる場合は、場所と時間をしっかり決める、ということがあげられます。この工夫によって、食後の歯みがきのタイミングも計りやすくなるわけです。

 

 食生活と健康はこのように密接な関係にあります。今こそ私たち一人ひとりが食育と健康について真剣に考えるべきときといえるでしょう。